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邦題は酷いけど中身は素晴らしい / 映画「ジーサンズ はじめての強盗」感想

試写会にて「ジーサンズ はじめての強盗」を鑑賞。最近割とマジに貧乏なので、こうやって節約できるところは節約しているよ。そんな貧乏人の自分にとって、ある意味他人事じゃない映画でした(苦笑)

「ジーサンズ はじめての強盗」
 製作:アメリカ
 監督:ザック・ブラフ
 劇場公開日 2017年6月24日

※※それとなくネタバレあります※※

 


映画『ジーサンズ はじめての強盗』本予告【HD】2017年6月24日公開


▼あらすじ(Movie Walkerより転載)

慎ましくも幸せな老後生活を送っていたウィリー(モーガン・フリーマン)、ジョーマイケル・ケイン)、アル(アラン・アーキン)の3人。ところが長年勤めていた会社の合併により、年金を止められてしまう。今までの生活を取り戻し、愛する家族と仲間たちとの幸せな余生を続けるために、3人は銀行のお金を奪おうと大胆で危険な企てを決意するが……。

 
▼感想

まずご覧のように邦題が酷い! 今に始まったことじゃないが、配給会社は酷い邦題をつけないと生きていけない呪いでもかけられてるのだろうか(原題は「GOING IN STYLE」)。しかし、邦題が酷くても中身は素晴らしい。モーガン・フリーマンマイケル・ケインアラン・アーキンという3人のオスカー俳優が集まった一流の作品です。


年金を打ち切られ(アメリカの年金制度がよくわからん)、自宅も差し押さえとなりそうなピンチに前にして、80歳を過ぎて銀行強盗を決意する3人の老人。字面だけ見れば、切なくて暗い設定ですが、実際はユーモアに溢れていて小気味いい、良質のコメディとなっております。

友人から「電話だぞ」と言われると、つかさず「誰が死んだんだ?」と返すような、いわばシルバー・ジョークとでも言うべきような会話が全編に渡って繰り広げられます。爆笑とまではいかないまでも、終始クスリとしちゃうようなシーンが多かったですね。銀行の待合スペースで、傾斜がかかった椅子からなかなか立ち上がれないでいる様は、腰痛持ちの自分にとって、もはや他人ごとじゃありませんでした(苦笑) 銀行強盗の練習としてスーパーで万引きをするシーンは、実にほのぼのとしております。

ただ、やはり主演の3人はどこか知的というか、どうしても立ち振る舞いに余裕を感じさせます。実際マイケル・ケインなんかは知的で冷静な役どころでしたけどね。銀行強盗を実行する時にスーツ姿になるんですが、やっぱり3人ともカッコイイ。その点、脇役として出演していたクリストファー・ロイドは、ホントにボケてるのかと思うぐらいのボケ老人役を好演(?)していました(笑)

銀行強盗を成功させた後、とあるミスから足がつき警察に疑われるのですが、その時に答え合わせ的に見せられるアリバイ工作のパートも、実にスムーズで無理がなく見事でした。

まあ、せっかくだから褒める以外の意見も述べるとすると、終始無難というか、予想外の展開や目を見張る演出等がなかったので、評論家とかそういう立場にいる人からすると物足りないと映るかもしれませんね。

 

▼リメイクされた意味

映画を見た後で知ったのですが、この作品実はリメイクでした。原題は「GOING IN STYLE」(1979年)で変わりませんが、その時の邦題はなんと「お達者コメディ/シルバー・ギャング」……今回の邦題はまだマシな方だったんですね(ちなみに、日本では劇場未公開でビデオのみの発売)。

リメイクするにあたり、原作と比べてかなり内容が変更されたようですが、その経緯がWikipediaに記載されておりました。

Wikipediaより転載

2012年10月12日、ニュー・ライン・シネマとワーナー・ブラザース映画が『お達者コメディ/シルバー・ギャング』のリメイクを企画しているという報道があった。ドナルド・デ・ラインとアンドリュー・ハースはリメイク版の脚本の執筆をセオドア・メルフィに依頼した。メルフィはエンディングを原作よりも明るいものにすることを条件にその依頼を引き受けた。メルフィは2人に「この現代において、私は自分の心血を注いで書き上げた主人公たちが、最後に死ぬか投獄されてしまう映画なんて見たくないのです。私は彼らが成功する姿を見たいのです。今や誰もが銀行を憎んでいるのですから、銀行強盗をした主人公が幸せになった方が完璧な出来になると思います。だからこそ、3人には立派に強盗をやり遂げさせる必要があるのです。夕日の下で成功を喜んでもらう必要があります。」と言ったところ、2人は彼の意見を聞き入れた。

 
脚本のセオドア・メルフィ氏、なかなか熱い人ですね。そしてその判断は正しかったんじゃないでしょうか。

この作品自体はコメディではありますが、銀行強盗を実行するに至る理由は、年金問題、住宅ローン問題、病気の問題等、シビアな老後の問題が原因なんですよね。それは現実の自分たちにとっても完全に地続きの問題で、正直言って自分も将来のことを考えると頭が痛いです。自分は将来年金を貰えんのかなぁ……貰えそうもないよなぁ、と思いつつも今は払わないわけにはいかないし、そもそもその前に孤独死するんじゃないだろうか、といった不安を抱えて生きているわけです。でもこの作品を観ることによって、そういった不安が少しでも和らぎ、年を取ることに対して勇気が出てくるのなら、それが映画のあるべき姿なんじゃないでしょうか。えっ、俺のメンタルが弱すぎ? うん、それは否定しない!

▼最後に

コメディではありますが、友情と家族愛も丁重に描いており、リメイクされたことによって最後もハッピーエンド。大企業や銀行等、一応憎むべき対象(?)はいるのですが、心の底から嫌な奴や、気分の悪くなるシーンは一切ないので、映画を見終わった後の後味も最高です。

とにかく、全編楽しくテンポよく、しかもそれを96分にまとめているのだから実に観やすい作品です。シルバー・ジョーク的に例えるなら、モチを詰まらせるような心配もない、実に喉越しのいい映画でした!