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演じることは「嘘」じゃない / 映画「はらはらなのか。」感想

ゴールデンウィークに軽い気持ちで、映画「はらはらなのか。」を観ました。主演の原菜乃華ちゃんが可愛いだけの映画でもよかったんですが、予想以上に素敵な作品でした。よって今さらではありますが、映画の感想とも言えないような駄文をアップしておきます。


「はらはらなのか。」
 製作:日本
 監督:酒井麻衣
 劇場公開日 2017年4月1日


※※微妙にネタバレあります※※

 


映画『はらはらなのか。』予告編


▼あらすじ(公式サイトより転載)

この物語の主人公は、冴えない子役女優・原ナノカ(原菜乃華)。自分が生まれると同時に亡くなった母・マリカ(松本まりか)に憧れて始めた道だが、オーディションは不合格続きで鬱屈とした日々を送っている。父・直人(川瀬陽太)の都合で田舎町に引っ越して来たナノカは、マリカが出演した舞台の再公演とキャスト募集のチラシを見つけ、絶対に主役をやりたい!と事務所にも直人にも内緒でオーディションに挑むが……。
運命に導かれるように出会った喫茶店の店主のリナ(松井玲奈)や、劇団Z-Lionの演出家(粟島瑞丸)と奇妙なメンバーたち(チャラン・ポ・ランタン、micci the mistake、広瀬斗史輝、上野優華、カンカンバルカン)、転校先のスター的存在の生徒会長(吉田凜音)たちと、いざ、「本当(リアル)」と「嘘(フィクション)」の世界へ! ナノカは物語の向こう側に何を見るのか――?

 
▼感想

この作品は子役であるナノカが、亡き母の所属していた劇団に入り、13年前に母が演じた舞台の再演に臨むというお話(しかもその舞台は、実際に原菜乃華が2年前に主演した舞台だというから、なかなかテクニカルでファンタジックな構造となっております)。

まずは冒頭の楽しいミュージカルシーンで一気に引き込まれました。個人的にはミュージカルシーンがもっと欲しかったです。わりと控えめだな、と思ったら、監督曰く決してミュージカルとして撮ったわけではないようです。

自分の内面を表すもう一人のナノカとの会話や、父親との関係性等、全編に渡って少女の成長の物語を描いています。……なんていうんでしょう、映画の感想とは違ってきちゃうかもしれませんが、いい年したおっさんとしては、最近こういう青春的なものを見せられると、それだけで胸がキュンとなって苦しくなって死にそうになります。それこそ過呼吸になりそうです(苦笑) 自分も若い頃にこういう作品を見ておきたかったです。そう思うぐらい素敵な作品でした。

芝居を演じていく中でナノカは「芝居なんて結局嘘じゃないか」という思いにとらわれ悩みますが、それを乗り越えたところで映画は終わります。個人的な話ですが、自分はプロレスやアイドルが好きなので、そういうファンタジーなものに対しての答えは明確に出てるのですが、そういうものを「嘘」だと断じてしまう人たちとの会話は悲しいです。そういう壁をみんなが乗り越えてくれれば、もっと楽しい世界になるのになぁ、と割と本気で思います。

▼俳優について

原菜乃華

そもそも原菜乃華って誰だという人にアイドルオタ目線を含めて説明しておくと、園子温監督の映画「地獄でなぜ悪い」(2013年)において、劇中で流れる歯磨き粉のCMで物凄いインパクトを与えた子役として出演、「♪全力歯ぎしりレッツゴー~」という歌詞が耳に残っている人も多いだろう。そのためその筋の人たちには一躍人気となり、某掲示板では2013年の時点で個人スレが立ったほど。そして現在は朝の帯番組「おはスタ」で、おはガールも務める。
作品の構造上、この映画は原菜乃華自身の成長物語にもなっていると思います。もう一人の自分や、舞台の稽古シーンにおける「演技の演技」等、特殊なシチュエーションの多い難しい役柄をよく演じきったんじゃないでしょうか。普段「おはスタ」での天真爛漫な姿ばかり見ている自分としては、改めて女優・原菜乃華を認識させられました。特に過呼吸に陥る場面では、映画を見ている自分もまるでその場に居合わせたかのように、固唾を飲んで見守ってしまいました。これからは真面目に女優として見続けていきたいと思います。


●吉田凜音

ナノカが通う学校の“ロックンロール生徒会長”「凜」の役柄ですが、生徒を引き連れて歌うシーンは最高に素敵でした。この時かかっていた曲が「瞬間的絶対正義」という曲名なのもいいね。
もともとロコドルとして名を馳せた彼女、アイドルオタとしては一時期さやぐれ気味だった凜音ちゃんを複雑な気持ちで見ていたのですが、ちゃんといるべき場所にいれば輝きが増すんだなぁ、と思った次第です。
さらに余談ですが、凜がナノカに「誰かのものの女の子と誰のものでもない女の子、どっちを応援したくなる?」的なこと言うシーンがあるんですが、思わずこれに全力で頷いてしまいました。そうなんだよ、全アイドルは見習ってくれよ。せめてそういうのは隠し通してくれよ。ホイホイとSNSに写真をあげちゃダメなんだよ!(ある意味某アイドルへの私信)


松井玲奈

物語のキーマンとなる「リナ」役。アイドルオタといえどAKB関係は専門外の自分ですが、素敵なお姉さんを演じていてとてもよかったです。そしてストーリーとあいまって、途中からは母性すら感じさせます。やっぱ食わず嫌いはダメですね。

●粟島瑞丸

この映画で劇団の演出家を演じながらも、実際にこの映画の原案となった舞台の主宰(脚本および演出)。この人がいなかったらこの作品は生まれませんでした。そして原菜乃華と同じように自分を演じたんですね。さすがにとても雰囲気のある方でした。

●micci the mistake

ノリと雰囲気が素晴らしい劇団員のミッチー役。個人的にこういう人大好きです。この人の存在のお陰でリアルとファンタジーの世界の行き来がスムーズだった気もします。酒井監督の前作品にも出演しているということなので、ぜひ見てみようと思います。

水橋研二

作品内での悪い大人役を一手に引き受けた、水橋研二演じるクズカメラマンもよかったです。「俺と君で芸術を作ってるんだよ!」というセリフは、自分も一度ぐらい言ってみたいもんです(おい)


●川瀬陽太

ナノカのお父さん役。この方、いつもはイカツイ役が多い気がしますが、今作品は本当にいいお父さんっぷりでした。娘であるナノカとのギクシャク感がリアルです。お尻出してたね(笑)

松本まりか

ナノカのお母さん役を演じた松本まりか。「六番目の小夜子」(NHKドラマ)からもう17年たったの!? それなのに相変わらず可愛いです! あ、いや、もちろん演技も良かったです。


▼最後に

映画だけを観ても十分納得したし、自分なりに消化したつもりでいたんですが、映画を観た後に公式サイトを見たら、酒井監督のインタビューにとても興味深いことが書いてありました。

公式サイトより転載

「ファンタジーをやりたいです」ということに対して、「結局嘘じゃん」と言われてしまったときに、一人の人間として、それって嘘なのかどうなのかを悩んだ時期があって。真実か嘘かというフィールドでは戦ってないんです。それよりも、どんな世界が見たいのか、どんなことを思いたいのか、ということでしか物語を作っていないので。その葛藤の行き着いた先がこの作品です。

――それが、本作で伝えたいメッセージでもあるんですね。

まだその本当か嘘かという壁にぶち当たってなくても、高校生くらいになると、その壁に出くわすこともあるかなと。いつか菜乃華ちゃん本人が悩んだら、「もうその悩みはやったでしょ?」ってこの映画を見せたい(笑)。

 
これを読んで、すっと腑に落ちました。チャラン・ポ・ランタンによる主題歌「憧れになりたくて」の歌詞も、「幻を追い越して、憧れになるんだ。」という映画のキャッチコピーも、すべてが繋がりました。

そう、映画やドラマ、舞台等のファンタジーは、決して「嘘」じゃないんだよ。現実を変えていくだけの「力」があるんだよ。

これが映画の感想としてあっているかどうか、正直わかりません。悲しいことに映画を観て2週間以上経っているので、色々と記憶が曖昧です。もう年だから(苦笑) せめてもう1回観ようと思ったんですが、都内は上映終了してしまいました。

まあ当たり前の話ですが、もしこの映画が気になったら、こんなブログを読むよりも実際に自分で観に行くのが一番です。まだ人生の目標のない若い人や、若くして舞台に立つような人たちにも見て欲しい作品ですね。

うん、自分も来世は頑張るよ!(やや後ろ向きな感じの前向きさで)